すごい名前のゲームがあるものだと思いませんか、「意地悪と悪意」なんて。今日の対決は古典的二人用カードゲーム、「スパイト・アンド・マリス」です。
詳しいルールはいずれ美化委員が書くと思いますし、他サイトでも入手可能ですので、ここでは省きます。すごく大まかに言ってしまえば、カードを共通場にすてて、早く自分の山札をなくすゲームです。場に捨てて山札をなくす、というのは、一人用トランプゲーム(ソリティア)によくあるシステムのため、スパイト・アンド・マリスは「二人用ソリティア」とも呼ばれていますが、プレーヤー同士の関連性は大変に強いのです。
対決開始。場にエースが出て捨て山が立つまでは、格別動きようもないので自分の仮捨て場に手札のカードを置いて山札から引く、というのを繰り返します。そのうちにエースが出てきました。おおっ、ここからが本番です。
最初は、捨てることがうれしくて、碌に相手の札も見ずにぱっぱぱっぱと捨てていました。共存共栄、君も私も捨てあおう、人類愛に満ちたゲームではありませんか、ほほほ、いったいどこが「悪意」なの?
あるとき、はたと気づきます。確かに次のカードを共通の捨て場に捨てることはできるけれど、これに続くカードが相手の仮捨て場に存在する、よって次の手番のときに相手有利になってしまう。ならこれを敢えて捨てないで、とりあえず自分の仮捨て場に(これみよがしに)置き、仮捨て場の余裕のある限り山札のヒキに賭けてみようではないか。なるほど、これは「意地悪と悪意」です。手の届かない距離で、空腹の人の前にご馳走を置くようなものです。うらめしやー。
さて結果ですが、2ゲームやって、私の2勝。このレポートを読んで下さっている貴重な読者の皆様、くれぐれもこの結果をもってわたくしの人間性を云々しないようにお願いします。
悪意や意地悪が直接的な形で出るため、意地悪する方も、される方もよい気持ちはしません。でも、二人用ゲームは多かれ少なかれつつき合いです。毒も少量だと美味しいのと同じように、他のゲームにない複雑な味わいがありますし、二人用ゲームのひとつのあり方だと思います。
また、今回は運の要素が強いと感じましたが、戦略性の強いアディクティブなゲームであると一般的に言われている(ざっとインターネットを調べただけなのですが)ので、次回の対決はまた違った展開もあるでしょう。酸いも甘いも噛み分けた紳士淑女のためのゲームです、と申し上げておきましょうか。
(ダジャレ委員)
【美化委員謹言】
D. パーレットによれば、これは1970年代にブリッジ・プレーヤーのブラックウッドという人が広く紹介したそうだ。ゲーム自体は古くからあり、あるヴァージョンは「ロシアン・バンク」としても知られている。パーレットの以前の本では手番終了時の捨て札は任意ということになっていたが(それに基づいたとおぼしき松田道弘氏の本でもそうなっていた)、近著では1枚捨てて手番が移るとなっている。いずれにせよ、中毒性があるという記述は至るところで見受けられるし、現にブリッジ・プレーヤーが好んでやっていたのは間違いがないようだ。今回は何かコツがありそうだという直観で終わった。またやってみたい。